パンとステレオ幅
パンはトラックの左右の位置を決めます。
ステレオ幅は、そのイメージがどれだけ広がるかを決めます。
この 2 つでミックスの横方向の空間を作り、すべてを中央に積み重ねる代わりに各パートへ居場所を与えます。このページでは、これらのコントロールを libsonare の PannerProcessor と StereoWidthProcessor に沿って説明します。基礎は ミキシングの基礎 を参照してください。
パン位置
パンは、トラックを左端から右端まで動かします。フィールドに広げると各パートに余裕ができ、マスキング(似た帯域のパートが互いを覆い隠すこと)も減ります。ただし「パン」という 1 語には、位置をどうチャンネルへ対応づけるかと中央をどれだけの音量にするかという別々の判断が 2 つ隠れていて、libsonare はその両方を公開しています。
たとえばボーカルを中央、ギターを左、キーボードを右に置くと、各パートに別々の居場所ができ、3 つを中央に重ねたときより一つひとつを追いやすくなります。混み合ったミックスほど、この左右の配置がパートの分離を決めます。
パンモード: 位置をどうチャンネルへ対応づけるか
パンモードはこの対応づけを選びます。
- 本来のパンはモノラルソースをフィールド上で動かします。
- バランスは、ステレオトラックを再配置するのではなく片側を下げます。
- 左右独立は各側を別々に配置します。
モードの違いが最も大きく出るのはステレオソースです。libsonare の本来のパン(stereoPan)は、まずトラックを (L + R) / 2 でモノラルに畳み、そのモノラル信号を配置します。そのためステレオイメージは必ず潰れ、左右で異なる成分は失われ、逆相の成分は打ち消されます。既定のバランスならイメージは保たれます。
パンロー: パンしても音量を一定に保つ
ソースを中央から片側へ振ると、補正しない限り知覚上の音量が跳ねることがあります。パンローは、中央をサイドに対してどれだけ減衰させるかを決め、動かしただけでパートが大きくなったり小さくなったりしないようにします。libsonare には次の 4 つがあります。
| パンロー | 中央でのチャンネルごとのゲイン | 一定に保つもの |
|---|---|---|
const3dB(既定) | −3 dB(0.707) | 総パワー。スピーカー再生で効くのはこちら |
const4.5dB | −4.5 dB(0.595) | 2 つの中間 |
const6dB | −6 dB(0.5) | モノラル合算(定振幅) |
linear0dB | 0 dB(1.0) | なし。中央を補正しない |
中央の減衰が出力に現れるのは本来のパンのときだけです。既定のバランスモードでは、パンを向けた側のチャンネルは等倍のまま、反対側だけが下がります。そのため中央のトラックはどのパンローでも 0 dB で、パンローが決めるのは反対側がどれだけ速く下がるかだけです。計算の詳細は ミキシングエンジン を参照してください。
ステレオ幅
ステレオ幅はイメージを狭めたり広げたりします。通常は、ミッド成分(左右に共通する成分)に対するサイド成分(左−右、つまり左右で異なる成分)の量を調整します。
広げると空間の広がりが増しますが、モノラル互換性の問題を招くことがあります。サイドだけの成分はモノラル合算で消えます。純粋な M/S 幅調整はモノラルの合算を保ったままサイドを拡大・縮小しますが、Haas ディレイ、極性の変更、その後のリミッティング、比較時の正規化によってモノラルの結果は変わります。
狭めるとフォーカスが締まり、モノラルでの頑健さが増します。幅はストリップの後半、パンの後に置かれ、配置済みの信号に作用します。そのため、パンしたモノラルソースでは幅を変えると位置も動きます。左いっぱいのモノラルソースは幅 0 で中央の −6 dB になり、幅 2 では反対側のチャンネルに半分のレベルの逆相成分が現れます。モノラルソースは幅を 1 のままにし、パンで配置してください。
libsonare がパンと幅をどうモデル化するか
パンは PanMode(本来のパン/バランス/独立)と PanLaw(中央の減衰)で構成される PannerProcessor で、ストリップではフェーダーの後に置かれます。ステレオ幅は StereoWidthProcessor で、ミッド/サイド表現に作用し、配置済みの信号に効くよう信号順の後半にあります。両者ともクリックのない変化のためパラメータスムージングされ、ポストフェーダーの GoniometerBuffer へ書き込まれるので、結果のイメージを計測できます。配置は チャンネルストリップ の固定信号順に一致します。