リファレンスマッチ
リファレンスマッチは、自分の音源を完成済みリリースと比較し、トーンやラウドネスの判断を助ける機能です。
リファレンスは「この曲と同じ音にする」ボタンではなく、判断の基準点です。自分のマスターが暗すぎる、明るすぎる、狭すぎる、詰まりすぎている、小さすぎる、といった偏りを確かめるために使います。
リファレンスは比較の基準であって、写し取る対象ではない
スカスカな曲を密度の高い商用マスターに無理やり合わせると、EQ だけでなく後段のダイナミクスやステレオの判断まで狂います。マッチで楽曲の個性が消えるなら強度が強すぎます。下げるか、トーン比較だけに使ってください。
何に使うか
リファレンスは、編成・ジャンル・密度・公開先が近い曲を選んだときに有効です。
良い使い方:
- 低域の量が大きく外れていないかを見る。
- 記憶に頼らず明るさを比較する。
- ステレオイメージが狭すぎる/広すぎることに気づく。
- ラウドネス目標が素材に対して現実的かを確認する。
避けたい使い方:
- スカスカなアコースティック曲を、密度の高い EDM マスターに無理やり合わせる。
- リファレンスの EQ カーブを耳で確認せずにコピーする。
- 商用リリースに近づいたからミックスは完成している、と判断する。
手順
- ソースを読み込み、まず一度マスターをレンダリングする。
- リファレンスパネルにリファレンストラックをドロップする。
- クレストファクター(ピークと平均レベルの差)、ピークレベル、ステレオ相関値を比較する。
- リファレンス EQ マッチは出発点として使い、最終結果として鵜呑みにしない。
- ラウドネスマッチングを有効にして聴き直す。
- 楽曲の個性が消えるなら、その処理は戻す判断をする。
マッチの操作は、ピンポイントの補正ではなく、トーン全体を大きく傾けるものです。下のデモは同じ性質の判断をコントロール 1 つで試すもので、どれだけ少ない量で済むかの感覚がつかめます。
戻すべきサイン
リファレンスに近づいた代わりに、ボーカルの距離感・低域のグルーヴ・アレンジの余白が消えるようなら、マッチの強度が強すぎます。リファレンスは完成形の目安であって、そのまま写す手本ではありません。
ジャンルや密度が大きく異なるリファレンスはとくに危険で、上の警告のとおり EQ 以外の判断まで狂わせます。リファレンスを差し替えるか、マッチ強度を下げるか、トーン比較だけに使います。
デモでの扱い
ブラウザデモはリファレンスファイルもローカルで処理します。ソースもリファレンスもアップロードされません。
リファレンスマッチを選ぶと、ワーカーがソースとリファレンスを比較し、制限付きの Match EQ を適用します。マッチ処理は意図的に控えめにしてあります。スムージングと最大ゲイン幅の上限を使うことで、不自然になりやすいスペクトルの丸写しではなく、マスタリングらしい穏やかな調整に近づけています。
実装メモ
ワーカーはソースとリファレンスをモノラルに混ぜ、masteringPairAnalyze で match.tonalBalance と match.matchEqCurve を解析します。リファレンスのサンプルレートは referenceSampleRate として渡すので、リサンプルはエンジンが行います。得られた補正カーブを約 1/6 オクターブで平滑化し、最大 6 dB の Peak バンド 4 本で近似して、After レーンのストリップ EQ に適用します。生のスペクトル差分カーブには、音楽的に不要な狭いノッチやスパイクが入りやすいため、この制限は重要です。
この処理は、1 つのソースファイルと 1 つのリファレンスファイルを比較するため、サンプルレートに注意が必要です。マッチ関数は referenceSampleRate を受け取り、リファレンスを sampleRate へ自分でリサンプルします(独自のサンプルレートのリファレンス を参照)。
マッチ結果はレポートにメトリクスとして残るため、Studio モードで手動 EQ を調整するときの目安にもできます。